シオニズムに対するユダヤ教の抵抗
Torahはユダヤ教の聖典、旧約聖書の最初の5つの書 (モーセの5書)の事
「トーラーの名において」の著者、ラブキン教授はロシア生まれのカナダ国籍を持つ歴史学者で、敬虔なユダヤ教徒。
およそ2,000年前、ローマ帝国によってエルサレムの神殿を破壊され、祖国を追われて世界に散らばったユダヤ人たちが迫害や差別を逃れて、約束の地に戻って国を再建したというのが一般的な説明になっている。これに正面から異論を唱えるのがこの本。
1948年 ユダヤ人の国としてイスラエルが建国される。以来、もともとその土地に暮らしていたパレスチナ人や周辺のアラブ諸国との間に激しい対立と戦争が繰り返されている。イスラエル建国の原動力となったのがシオニズムと呼ばれる、ヨーロッパで生まれた思想。その意味を正面から問い正す本が、モントリオール大学教授の ヤコブ・M・ラブキン氏が著した「トーラーの名において(シオニズムに対するユダヤ教の抵抗の歴史)」である。
ラブキン:イスラエルでは、ホロコーストの悲劇が意図的に強調されてきた。
解説:1948年の5月、ヨーロパなどで迫害を受けたユダヤ人が、祖先の土地と見ているパレスチナでイスラエルの建国を宣言した。これは、国連のパレスチナ分割決議を根拠にしたものであるが、アラブ人が過半数を占める人口比率を無視た不当な決議だとして、アラブ諸国は激しく反発した。
1948年、第一次中東戦争が勃発。イスラエルは戦争に勝ち、もともとこの土地に暮らしていたパレスチナ人70万人が難民となった。その後、アラブとイスラエルの戦争が繰り返された。イスラエルは強力な軍事力を備え、1967年の第三次中等戦争では、支配地域を一挙に4倍以上に広げた。
イスラエルは戦争の度に占領地を拡大してきました。アメリカからの軍事支援と豊富な資金提供によって、やりたい放題。パレスチナの人々への虐殺が繰り返され、彼らは難民となって、一部はヨーロッパに散らばっています。
国連ではイスラエルに対し、占領した土地からのい撤退を求める決議が採択され、その後アメリカなどの仲介で中東和平交渉などが進められたが、多くの問題、特にパレスチナ問題は未解決のまま。イスラエル、アメリカ両方ともシオニズム側なのです。現在イスラエルの人口の20%がアラブ系であるが、イスラエルは自らをユダヤ人国家と規定している。イスラエルはユダヤ人の為にある国家であると宣言しているのです。
ラブキン:シオニズムは19世紀のヨーロッパで生まれた政治運動です。ユダヤ教の集団を民族に統合し、共通の言語を与えてパレスチナの土地に移住させ、支配しようという運動です。宗教用語を多用していますが、基本的にユダヤ教の教えとは相容れません。シオニズムとは無神論的です。
解説:本来、ユダヤ人とはユダヤ教徒を意味する。ユダヤ教を信仰していれば人種・国籍・国境は無関係だった。日本人でもユダヤ教徒になればユダヤ人という事になる。シオニズム運動によって、ユダヤの言語、ユダヤの生活スタイルが決められ、そうした枠にはめてユダヤ人を管理しようとしている。
ラブキンは、中東問題は実は単純な事であると言っている。すべてはイスラエルの建国によって始まった事である。あたかも宗教問題のように扱うから複雑に聞こえるが、これは純粋な政治問題である。ユダヤ人国家を名乗るイスラエルが、パレスチナを占領し抑圧してきたことは、本来のユダヤ教の教えである調和や親切心という性質とは正反対の行動であり、ここに根本の原因があるという立場をとっている。
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